トラブルにならないための〜法律の相続対策
トラブルにならないための〜法律の相続対策
文書作成日:2023/05/20
任意後見

今回は相談事例を通じて、任意後見についてご紹介します。

Q
今月のご相談

 近頃、母の物忘れが多くなってきました。今は母一人で買い物をしたり、ATMでお金を引き出したりすることができていますが、認知症が心配です。将来的には、おそらく母1人では行動できなくなると思うのですが、今から準備しておくとよいことはありますか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 認知症などにより判断能力が低下し、日常生活に支障をきたすようになってしまった方を保護・支援するために「成年後見制度」という制度があります。お母様の判断能力がまだあるのでしたら、「任意後見契約」を結んでおくことをお勧めします。

A-2
詳細解説

 成年後見制度は2つに分けることができます。

 1つ目はすでに判断能力が低下してしまった方について、裁判所に申し立てる「法定後見」です。
 2つ目は本人(本件ではお母様)に判断能力があるうちに「私の判断能力が低下したときにはあなたに財産管理を任せる」旨を、本人と管理を任せたい人の間で契約をする「任意後見」です。

 それぞれの特徴や使い方を簡単にご説明します。

●法定後見(民法第7条、第843条、第844条)

 法律で決められた支援・保護のことで、すでに判断能力が低下した人のための制度です。家庭裁判所が本人等の申し立てにより財産管理等をする人(以下、後見人等)を決めることで、後見人等が本人に代わって財産管理等をすることができるようになります。

 後見人等は、裁判所がその人の職業や経歴などの一切の事情を考慮して選ぶことになります。候補者として身内や知り合いを挙げることはできますが、候補者が後見人等として適任でないと判断される可能性もあるので、後見人等が誰になるか分からない、という点が特徴の1つです。
 なお、後見人等が選ばれた後は、正当な事由がない限り後見人等の任務を辞めることはできません。後見の任務が想像より大変で、「やめたい」と思っても辞められない可能性がありますので、事前に任務内容を理解しておくとよいでしょう。

●任意後見(任意後見契約に関する法律第2条、第4条、第7条、第9条)

 任意後見は本人の判断能力があるうちに、自分の判断能力が低下したときに誰に財産管理等を任せるのかを決め、契約する制度です。
 判断能力が低下したら、本人やその家族等が裁判所に申し立て、任意後見監督人を選任してもらうことで、任意後見契約が発効します。任意後見監督人は、財産管理等をする人(任意後見人)の事務を監督し、裁判所に報告をする人です。
 任意後見監督人が選任される前であれば、いつでも契約を解除することができます。しかし、任意後見監督人が選任された後だと、法定後見と同様に正当な事由がなければ辞めることはできませんので、事務内容を事前に理解しておく必要があるでしょう。

 詳しくは専門家にご相談ください。機会があればと思っていると先延ばしになってしまうので、話を聞くだけでもお早めに行動することをお勧めします。

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